アイスランドの魚を食す

ある日、

「これ漁師からもらったんだけど、みんなで食べない?」

と、レジデンスに出入りしている人がビニール袋を持ってきました。

中を覗くと、ぬるっとした魚が入っていました。

おっと。

聞くと、これはcod(タラ)だということです。

もちろん断る理由はありません。

レジデンス生活が始まってからというもの、私の食事は、

朝リンゴ、昼自作サンドイッチ、夜自作サンドイッチ、

となっていたので、久しぶりの魚、しかも漁師が近海で捕ってきた魚だということで、胸が高鳴ります。

こうしてお魚パーティーが開催される運びとなりました。

「スシの国から来たのだから、お前が魚を捌け」と言われないだろうかと少しヒヤヒヤしていたのですが、ラッキーなことに、魚を捌くのが得意な人がいました。その人はポーランドからアイスランドに出稼ぎに来ている人で、スシ・レストランで修行をしたことがあるそうです。

その方が魚の内臓をきれいに取ったものを、次の日アパートに持ってきてくれました。

また目が合ったね。
きれいに処理して持って来てくれたので、あとは味付けして焼くだけ。
バターや塩こしょうで味付け。
アーティストの一人がサラダを持ってきてくれました。
焼けたようです。
テーブルもセッティングできました。
付け合わせはじゃがいもと、冷凍フライドポテト。芋と芋の共演。

魚は白身の淡白な味に、バターが香って美味しく、付け合わせの小さい丸ごとジャガイモも美味しくいただきました。

この写真の緑色のペーストのようなものは、ブロッコリーにガーリックや調味料を混ぜ、ミキサーで細かくしたものです。ブラジルのアーティストが作ってくれました。

今日の料理には白ワインなんかが合いそうですが、アイスランドでは気軽にはお酒が買えず(村に一軒あるスーパーにはアルコールを置いていません)、今夜の飲み物は水道水です。みんなで水を飲みました。

水道水とは言え、アイスランドの水道水は世界一美味しいとの噂もあるくらい、美味しいのです。

そのおかげで滞在中の飲料水には困りませんでした。高いペットボトルの水を買わなくて済んだので、本当にありがとう、アイスランドの水道水。

実はアーティストたちと集まって一緒に食事をするのは、このお魚パーティーが初めてでした。

このレジデンスでは、食事は各自好きな時に、自分で用意して取っていました。

食事の好みや時間を気にせず、勝手に取っていいのは気楽で、自分には合っていましたが、たまにこうしてみんなで集まるのも、滞在生活ならではの醍醐味です。

アーティストは各国から集まっていました。

私は陶芸作品を作るということで参加していましたが、アーティストの分野も様々でした。

フランスから来た画家、

ブラジルから来た文筆家、

メキシコから来たメディアアーティスト、

オーストラリアから来た写真家カップル、

デンマークから来た文筆家、

アメリカからきた映像作家、

アメリカからきた詩人、

韓国から来たアニメーション作家、

そして私を含む、総勢10名のアーティストが滞在していました。

また、近所に住んでいるフランス出身の写真家もスタジオに出入りしていました。その人が漁師から魚をもらってきてくれたおかげで、このお魚パーティーが実現しました。

共通言語は英語で、みんな流暢によく喋っていました。

アーティストの一人が、以前どこかの空港で、現代美術家のダミアン・ハーストに間違えられ、別人だと言っても信じてもらえず、握手を求められた話で盛り上がりました。みんなで画像検索をして確認したところ、確かにどことなく似ていました。

また、別のアーティストは、René Galletというフランスの有名な学者に会ったことがあるが、憧れが強過ぎて声をかけられなかった、と話していました。

自分の知らない文化や世界が垣間見れるのが面白く、いろんな人の話を聞いて、お魚パーティーは21:30頃お開きとなりました。

こういったパーティー以外、滞在中の私の食生活は大層質素なものだったのですが、それはアイスランドの物価の高さが原因です。

昨今の円安とは関係なく、アイスランドはかなり以前から物価が高いことで有名でした。

アメリカやフランスから来たアーティストたちも、高い高いと言っていたので、日本人の私だけが感じていることではないことは確かなようでした。

物価は高いのですが、スーパーでは意外とお手頃価格なものも売られており、自炊をすればなんとか生きていける状況でした。

そんなわけで、アイスランドの物価を現地で調査してまいりましたので、次回少しご紹介したいと思います。お楽しみに…