アイスランドの陶芸における素焼きの温度

目次

アイスランドも他のヨーロッパの国々と同様、日本よりも素焼きの温度が高かった、という陶芸の話です。

私はこれまで日本でしか陶芸作品を焼成したことがなかったので、今回初めてアイスランドで陶芸制作をするにあたり、現地での焼成温度について色々調べました。

(※素焼きとは、粘土を成形・乾燥させた後、釉薬をかけないで焼く、一番最初の焼成のことです。)

まず、日本での素焼きの温度は

私はこれまで日本の陶芸教室や芸術大学の陶芸科などで、陶芸を教わってきました。日本で普通に電気窯を使って素焼きをする場合、800℃前後で行うことが多く、大体いつもそれくらいの温度で行ってきたかと思います(磁器の場合はまた温度が違います)。

この800℃前後という素焼きの温度ですが、地域や作家、作品のサイズ、窯に詰める作品の個数などによってもまた変わってきます。私の陶芸の大学は京都にあったため、京都で主流とされるやり方を学んできましたが、もしかしたら京都では当たり前とされていることが、他の地域では全く違うかもしれません。そういうことが陶芸ではよくあるように思います。ズバリ正解の温度があるわけではありません。その土地の土に合わせて、その日の気温や湿度を考慮して、また、作品のサイズや個数に合わせて焼成温度が変わってきます。

アイスランドの素焼きの温度は

ところ変わって、アイスランドでの素焼きの温度はどのくらいなのでしょうか。これまで海外で陶芸制作をする経験がなかったので知りませんでしたが、アイスランドを含む、フランス、ドイツなどのヨーロッパの国々では、日本より素焼きの温度が高いようです。これも、国や地域、使う土などによって様々なので、断定はできませんが、私が見聞きし、調べた限りでは、全体的に日本より高めのようでした。

アイスランドのアーティスト・イン・レジデンスの陶芸窯はドイツ製の電気窯でした。窯の取扱説明書には焼成の目安温度が記載されており、950℃が標準的な素焼きの温度とされていました。

他のヨーロッパの国では

他にも聞き込み調査などをして独自に調べてみると、どうやら950〜1060℃くらいがヨーロッパでの標準的な素焼きの温度のようでした。これも、個人差や地域差、土の違いなどがあるので何℃なら正解ということはないと思います。

アイスランドで電気窯の取扱説明書を初めて見たときは、「素焼き950℃は高温だな」と感じましたが、950℃はむしろ低いくらいだ、とフランス人アーティストに言われました。

彼女は普段、自国フランスで陶芸をしていて、日本の素焼きが800℃前後で行われているということが信じられないといった顔つきをしていました。では普段フランスで陶芸をする際には何℃で素焼きをするのかと尋ねてみると、彼女の場合は980℃で素焼きをするということでした。950℃より少し高いのは、電気窯の950という表示を信用していないから、950より少し高めの980に設定するのだと言っていて、なるほど納得と思いました。窯の使用年数が長くなればなるほど、機械の不具合や誤差が生じてくるため、自分の勘や微調整が重要になります(そうなる前に定期的にメンテナンスするのが一番良いかとは思いますが)。そんな、マニュアル通りにはいかないところが陶芸の面白いところでもあります。

郷に行っては郷に従え

アイスランドで入手した土を使う以上、現地で広く行われている温度で焼成するのが安全です。郷に行っては郷に従えです。以上の調査結果を踏まえ、私は950℃での素焼きを実行することにしました。

国が違えば、土も変わり、素焼きの温度もこんなに違ってくるものなのかと大変興味深く、驚きました。

こういった素焼きの温度の違いに直面して思ったことは、やはり日本は陶芸に適した土に恵まれた国なのかもしれない、ということです。そんなに高温で焼かなくても素焼きが完了するということは、それだけ扱いやすい土だと言えるのではないでしょうか。

そんな違いも、日本以外の国に来たからこそ気付けました。

制作中のスタジオの様子

滞在中に制作した陶芸作品

さて、初めてのアイスランドで、アーティスト・イン・レジデンスという制度のもと、現地に滞在し、陶芸作品を作る機会に恵まれました。滞在中に作った陶芸作品の動画をYoutubeにアップしたので、よかったらぜひ見てください!

陶芸作品を作り、動画も自分で撮影し、自分で編集する、というDIY精神にあふれた動画となっております。動画編集はかなり時間のかかる作業で、そのため陶芸制作をする時間がなくなるという矛盾にも直面しました。チャンネル登録していただけると、全ての矛盾が解消し、励みになります。どうぞよろしくお願いします!