アイスランドは荒々しい自然に囲まれた国なので、この地に暮らす多くの人は岩や石、苔などの身近な自然を大切にしています。少数の人は実際に岩の中にはエルフ(精霊)が住んでいる、と信じていますが、大多数の人はエルフの存在を積極的に信じているわけではなく、その存在を否定はしない、というスタンスのようです。エルフや精霊のたぐいの言い伝えはアイスランドに限らず、周辺の北欧諸国やイギリスにもあります。現代でもエルフを信じている、あるいはその存在を否定しない人々は、自然を大切にすべきという教訓として、そのような言い伝えを大事にしているのではないかと感じます。
日本にも、自然に関する古い民話や言い伝えなどがたくさんあります。日本の場合も、人間が勝手に自然を荒らしてはならない、自然には人智を超えた力がある、という戒めとして代々伝わってきたものが多いかと思います。
アイスランドでは、実際にエルフを見たという人が何人もいて、そういう方たちの証言を記録したり調査したりしている「エルフ研究家」もいます。
過去には、道路工事の際に大きな岩を動かすか動かさないかで、工事業者と、エルフを守りたい人たちや自然保護団体との間で騒動がありました。その大きな岩はエルフの教会だと信じられてきたからです。結局はその大きな岩を工事の邪魔にならない場所へ動かすことで解決しました。
参考URL1:当時のことを簡潔にまとめたBBCの記事(英語)
Iceland’s ‘elf church’ rock moved to end road row (Published March 20, 2015, BBC)
参考URL2:アイスランドで一番読まれているというニュースサイトmblより、 道路工事を中断して岩を動かす様子が1分にまとめられた動画(アイスランド語の音声なので興味がある方は聞いてみてください。)
„Álfarnir sáttir á nýjum stað“ (Published March 18, 2015, mbl)
https://www.mbl.is/frettir/innlent/2015/03/18/alfarnir_sattir_a_nyjum_stad/
ここまで便宜上、エルフ(精霊)と書いてきましたが、アイスランドでは岩に住む精霊のことを Huldufólk (hidden people)と呼びます。厳密にはHuldufólkとエルフは別物と考えられています。エルフは人間よりも小さく描かれることが多いですが、Huldufólkは人間と同じくらいのサイズで、我々よりも少し背が高く、おしゃれな服装をしていて、美しい、と考えられています。ただ、多くの人間には、彼らのことが見えません。まだ邪念や偏見を持っていない幼い子供などには、Huldufólkが見える場合があるようです。大抵はいたずらや悪さをしないでくれますが、人間が自然を破壊しようとすると、Huldufólkも黙ってはいないようです。
参考URL3:Huldufólk (hidden people)についてのBBCの記事(英語)
Why Icelanders are wary of elves living beneath the rocks (Published June 20, 2014, Written by Emma Jane Kirby, BBC)
また、下記の動画は全編英語ですが、現地の人々(エルフを信じている人やエルフ研究家、大学教授など様々な立場の人々)がHuldufólkをどのように捉えているかが簡潔にまとめられた動画です。(Thank you Lucas for sharing this video!)
参考URL4:Huldufólk (hidden people)についてのドキュメンタリー映像。約15分(英語)
Huldufolk: The Hidden People – Documentary (Published May 21, 2015, (BA) Hons TV Production Degree Show 2015)
Huldufólkの起源についてはこんな話があります。
話は天地創造のアダムとイブの頃に遡ります。
ある日、神様がアダムとイブを見にやって来ました。アダムとイブは神様を家に招き入れました。そして、自分たちの子供を見せました。神様はイブに「この子たちの他にも子供はいるか?」とたずねました。イブは「いません」と答えました。
しかし実際には他にも子供たちがいたのです。イブが子供たちを洗い終える前に神様が来てしまったので、イブは神様の前に汚い子供たちを出すのを恥じて、洗い終わっていない子供たちを隠していたのです。
そんなことは、神様にはお見通しでした。そして、このことが神様の怒りを買ってしまいました。岩陰に隠された子供たちはその後、人間からも見えなくされてしまったということです。
この、岩に隠された子供たちの子孫が、隠された人々、Huldufólk (hidden people)となり、イブが神様の前に出した子供たちの子孫が我々人間だということです。
(参考URL5:レイキャビクにある、エルフのことが学べる学校「エルフスクール」のホームページ https://theelfschool.com/ より、Huldufólkの起源の話。)
何か問題の発端となり、悪者扱いされるのは女性であるイブであることが多い気がします。時代的なものだから仕方ないとは言え、「またイブかい」という気持ちになりました。そしてアダムは何してたのか?神様も全てお見通しなら何の意図があってそんな意地悪な質問をしたのか?という疑問が湧きますが、話自体はとても興味深いものです。
Huldufólkを調べる中で、ドキュメンタリー映画『Huldufólk 102』(Nisha Inalsingh監督、2006)も観ました。
このドキュメンタリー映画に登場する方たちが、Huldufólkの存在について、「ラジオの選局と似ている」と言っていました。
Huldufólkのような超自然的な存在は確かに存在するが、ただ我々がtune in(波長を合わせること)をしていないだけ。周波数を合わせないとラジオが聴けないのと同じで、我々がHuldufólkの世界に周波数を合わせないと、彼らの姿を見ることはできない。という考え方が私にはしっくりきました。
世の中には、人間界の周波だけでなく、色んな世界の周波が飛び交っているのかもしれません。








私はこのアイスランドのHuldufólkに興味を持ち、作品制作のテーマにすることにしました。
そしてアイスランドで入手した粘土を使い、私なりのHuldufólkの制作を開始しました。
さて次回は、ひたすら黙々と制作した話や、スタジオ周辺の町の様子などをお伝えします。お楽しみに…