粘土が買えないトラブルとアイスランドの個性的な郵送方法

さて、前回の続きですが、私が滞在したアーティスト・イン・レジデンスの共用スタジオには新しめの電気窯が設置されていました。

ボロボロに使い込まれた古い電気窯がついに動かなくなり、新しい窯を最近買ったのだそうです。古い窯にはコンピューターがついていませんでしたが、新しい窯はコンピューター付きです。コンピューター付きならばこちらが温度設定を入力するだけで、計画的に温度を上げてくれます。これがついているかいないかの違いは大きいです。便利な時代に生まれました。

役目を終えた、古い方の電気窯。

私の当初の計画では、屋外で野焼きをする予定でした。しかし、許可を取るのが大変なことや、環境や近隣への配慮などから、今回は断念しました。

また、スタジオ周辺の土を使って作品を作りたかったのですが、周辺の土は陶芸には適さないようでした。

作品作りに適さない土をあえて使って、何らかの作品を作ってみるのも面白そうだとは思いました。試行錯誤する時間があればやってみたかったのですが、今回は1ヶ月のうちになるべく作品をたくさん作りたいという意思の方が勝ったので、大人しく粘土を買うことにしました。

粘土屋のホームページで粘土を選び、オンライン注文する段まで進んだものの、サイトの不具合のためか、購入まで辿り着けません。色々と情報を入力しなおして試してもダメなようでした。粘土屋へ問い合わせのメールもしましたがすぐには返信がなく、もどかしい思いをしながら数日間過ごしました。

こちらのレジデンスには、ディレクターが毎日いるわけではなく、数日おきに来ます。WhatsApp(連絡用ツール)でディレクターに状況を説明し、アドバイスを乞うも、やはり次回出勤時に一緒にやろうということになり、ディレクターの次回出勤日を待つことになりました。

粘土を手に入れるまでの間は、「毎日ドローイング」をしたり、ホームページ作成について調べたりして過ごしました(このホームページはアイスランドで立ち上げました)。

「毎日ドローイング」とは、その名の通り、毎日一枚ドローイングをするというもので、陶芸制作と並行してやっていこうと計画したプロジェクトです。

レジデンスの場所がアイスランドの漁港の田舎町であったこともあり、道を歩けば石に当たるような環境でした。石ころになる前の、ごつごつした岩や崖もあります。そのような岩を紙に写し取りたいというのが発端です。フロッタージュという方法で、岩を写し取り、そこに線などを描き加えてドローイングをしていくことにしました。

記念すべき滞在初日のドローイング。
日差しが眩しく良い天気でも、15分後には霧が出たりするほど、アイスランドの天気は変わりやすい。
私のスペースとなった共用スタジオの一角。

そうこうしているうちに、ディレクターの次の出勤日がやってきました。

早速、ディレクターが問題の粘土屋に電話をかけてくれました。しかし粘土屋に電話が繋がったかと思ったのですが、不在のようで留守電の自動音声だけが聞こえます。仕方がないのでその後、二人で色々と試行錯誤し、なんとか粘土屋のオンラインショップで粘土が買えました。

“Solved!” (解決!)

と、二人で笑顔になりました。

異国にいると、自分がよちよち歩きの赤ちゃんになったような無力さを感じます。日本なら粘土を買うくらいでつまずきません。問題が発生しても自分で問い合わせができます。しかし、一歩国外へ出ると、普通だと思っていたことが通用しません。国民性も違っていて、島んちゅタイムというか、こちらが急いでいても、相手がそれに合わせてくれるとは限りません。異国に来たんだなという状況を噛み締め、ならばこの状況さえも楽しもう、と切り替えることが大事なようです。幸い、やることはたくさんあったので、粘土待ちの間も手が空くということはありませんでした。

粘土が配送されてくるまでにそれからさらに2日ほど待ちました。

そしてその配送方法が独特で、町に一つある郵便局に配送されてくるというのです。つまり自分で郵便局まで重い粘土を取りに行かないといけないという、鬼のような配送方法でした。

さらには、オンラインショップですでに配送料は支払い済みでしたが、郵便局では「保管料」が追加で取られるのだそうです。

なんじゃそりゃ、とぼやきつつ、粘土を取りに、郵便局まで歩いて向かいました。

購入時に配送料を払ったのに、こちらが指定した住所に配送してくれるわけではなく、郵便局まで取りに行かないといけないとは。おそらく滞在先が田舎町だからこのような配送方法だったのだと思われますが、国や地域が違えば色々な仕組みが違います。

保管料は3180 ISK(およそ3200円ほど)しました。

粘土がなければあらゆる事が進まないので、カネで解決するしかありません。ここは大人しくカネを払います。

郵便局はどこですか。
途中の景色に見とれて郵便局まで辿り着かない。
郵便局あった。
郵便局の隣のレストランは廃業中。

その後、保管されていた10キロの粘土を郵便局員が出してきてくれ、無事に受け取りました。

そして10キロの粘土を抱え、歩いてスタジオへ帰ります。

10キロは素直に重い。

そんなこんなで、いよいよ粘土制作ができる状況になりました。

当初の野焼きプランは消え去り、手元にはアイスランドの粘土があります。

粘土が届くまでの数日間に色々と構想を膨らませた結果、アイスランドの石や、アイスランドに古くから伝わるエルフ(精霊)をモチーフに、私の想像する「石の精霊」を現地の粘土を使って作ることにしました。

精霊の話が長くなりそうなので、次回へつづく…